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もの想うわたくし

子守唄。

病院の夜は暗く長い。

いや、実際は薄ぼんやりと明るいのだよ。
時々、爺ちゃんが徘徊してたりして、
それをなだめる看護士の声が賑やかだったりもするしね。

大部屋では消灯後、ベッドランプの明かりを点して
個人がテレビを見たり、読書をすることは許されている。
が、部屋全体の明かりは強制的に消されるのだ。
それが合図かのように、あれだけ喧しかったお喋りも絶えるのは助かるけれど・・・。
この病院の消灯時間は午後9時である。
その代わり朝は5時頃からザワザワとし始めるから
睡眠時間8時間と考えれば早すぎるというわけでもない。
もちろん、睡眠時間を8時間も必要としない人間にはちょっと辛い。

暗い、というのはわたしの個人的主観である。

こういう状態で何かを考えようとしても
ろくなことは思いつかない。
何も食べない状態で、脳も栄養失調である。
そもそもたいして出来の良い方ではないから
無駄に回転させる必要もないのだが。
時々、空回りを始めて眠れない。

じゃ〜〜〜ん!
そういうわたしの必須アイテム!
桂米朝、桂枝雀の師弟コンビによる名落語ライブ集っっ!

これは2年前、友人が自分の秘蔵CDからピックアップして
ipodシャッフルに入れて送ってくれたものである。
これを聴く。
薄い布団の中でくっくっくっく、と肩を震わせながら聴いているうちに
心地よい睡魔がやってくる。
気をつけなければならないのは消し忘れ。
深夜に観客の大爆笑に驚いて飛び起きること度々。

そう言えば・・・直腸がんの手術待ちで自宅待機していた頃
一階にある和室でこれを聴いていて・・・
自宅だから声を出して笑っていたのだが
真上の部屋に下宿していたナオトに
「真理さん、夜中に一人で笑うのは止めてくださいよ。
時期が時期だけに、すっごく怖い・・・。」と言われたことがあったっけ。

あ・・・もし今、声が漏れてたら・・・
病院だし、もっと不気味かも・・・(笑)

甘酒を飲みながら・・・。

わたしの大好きな杜氏さんがいらっしゃる蔵で
米麹100%の純粋甘酒というのを造っている。
ノンアルコールで甘くて・・・飴のような風味だ。
これが滅法美味しい。
昔、甘酒はみなこのようなものであって
夏場に好んで飲まれていたそうな。
滋養強壮の効果があるという。

普段、お酒を自由に飲んでいた頃は
いかに美味しいとは言え
注文してまで飲むことはなかった。
が、ふと思いついて秋田の友人(酒店主人)に
発注したのだった。

事情を知ってる秋田の友人は
「お見舞い」として6本の甘酒を届けてくれた。
まことにもって申し訳ない。
感謝の一言に尽きる。

本来ならたっぷりと入った麹も一緒に飲むのだが
それを漉して甘酒だけをいただく。
アミノ酸を多く含む、というから
体に良いことは間違いない。
それ以上に、美味しい!

軽く一本飲んじゃった!

実は、昨日
このブログのコメントや
また友人からのメールで
イレウス患者の実態を垣間見る機会を得、
さらに、某ソシャールネットサイトの「イレウス患者コミュニティー」で
200人あまりの実体験記事を読んだのだった。
その凄まじい内容に、一時ショック状態に陥る。

昨晩はまんじりともせず朝を迎えた。

イレウスを何度も繰り返している人たちの中には
今のわたしの状態で日常生活を送っている人が少なからずいる!?
腹痛や嘔吐の症状があっても
我慢できる範囲なら、自宅で絶食しながら様子をみるのは当たり前!?
栄養ドリンクとスポーツ飲料だけで生活している!?
いつイレウスを起こすか分からないので
自宅療養を余儀なくされ社会に出ることも出来ない!?

イレウスの原因はいろいろだが
30年前の盲腸手術というのもあって
それでもなお、腸管癒着剥離の手術を受けないのだ、と言う。

考えた。

もし、今のわたしに大腸癌の再発があったら
誰もが迷わず手術を勧めるだろう。
特別な思想や宗教観のある人は別かも知れないが
医師も逡巡しないはずだ。
そのとき「癒着のリスクが高いから考えたほうがいい」などという意見は
出てこないはずだ。

現状を打破するには手術しかない。
だとすれば
その後、またイレウスになる可能性が高くなるのだとしても
わたしは手術を選ぶ。
因みに、この状態が少しくらい改善されて退院出来たとしても
イレウスの再発に怯える状態は同じだと思える。
少なくとも、どれくらいの期間か分からないが
手術をすれば普通にものが食べられるのである。

癌で死の影に怯える(あんまり怯えた記憶はないが)より
ものが食べられない今の方が嫌だ。

という話を、朝、おーくんとする。
初めておーくんとわたしの意見が一致する。
「今、食べられない状態をどうにかするのが先決だと思う。」

但し、おーくんの見解では
「2回目の手術で癒着がすごかったって言われたんでしょう?
だったら、腹腔鏡手術は難しいと思うよ。
だって癒着してるのは、イレウス起こしているところだけじゃないじゃん?
僕は外科じゃないからはっきりしたことは言えないけど
開腹になると思うよ。」

ついに点滴が手の甲になる。

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ご心配なく!

痩せた、と書いたけれど・・・
これはあくまでも以前のわたしとの比較であって
辺りを見渡せば今のわたしより細身の人はいくらもいるのである。
だから全然心配なんかしないでいただきたい
尾骨が出て「褥そう」レベルだとも書いたが
わたしが女性としては外科医も驚くほど骨が太く大きいせいだ。

今日、免許の更新で警察署に行ったけれど
わたしは誰より健康そうだった、と学くんが言っていた。

わたしのイレウスは小腸そのものに関して言えば
なんのダメージも炎症もない。
動きが悪くなっているから多少浮腫んではいるようだが
これで少しでも食べ物が通過するのなら
手術を必要とするレベルではない。
即、退院だ。
だから、現在入院中の病院では繰り返し食事にチャレンジさせたのである。
決してここの医師がや○だからではない(と思う)。

そうして、もし症状が軽減し退院、となったら
何度もイレウスを再発させていたかも知れない。

わたしの骨盤内は、2度の手術と放射線治療で
派手に癒着しまくっている。
2度目の手術のとき、直腸を切除するのに
航ちゃんが苦労したのはまさにこの点であった。
術後、癒着を剥がすのに手間と時間を要した、と愚痴っていたから
よほどだったのだろうと思う。
そういう意味で航ちゃんは、無駄なことを話すタイプの人間ではない。
どちらかと言えば、無口な男だ(無愛想とも言う)
だから2度目はもっと凄いことになっているのじゃないか、と推測するのだ。
で、この癒着は・・・手術で腸が空気に触れることだけでなく
出血による血液によって増進されるのだそうだ。
また、傷を受けた腸の自己防衛で
それを庇うように癒着は進行する。
つまり癒着イコール悪ではない。
癒着のシステムは体にとって必要なものなのだ。
しかし、癒着はある程度の段階になったら止まる。
今回のわたしの小腸トルネードも
ここ数ヶ月で出来たものではない、ということだ。
恐らく・・・ストレスで動きが鈍くなった、
または逆に過敏に動いた小腸が
何かの拍子で変にくびれたか捩れたか・・・折れ曲がったか。
で、そこが元に戻らないので
ガスと液体しか通過できない状態になってしまった。

わたしが望んでいるのは
腹腔鏡腸管癒着剥離術という手術だ。
特別難易度の高い手術ではないようだが
もちろん腹腔鏡手術を積極的に実施している病院でなければやってくれない。
技術と経験と設備が整っていなければ出来ないということ。

この手術の利点は出血が少なく
開腹しないので癒着のリスクが低い。
これは大きい。
よって、この手術を受けた人のほとんどイがレウスを再発しないのだそうだ。

ただ、条件として癒着が軽度であるか若しくは単純であること。
癒着している場所の問題。
そして小腸そのものにダメージがないこと。

今は自分がその条件に合致するよう祈るのと同時に
北里・・・に限らず、腹腔鏡手術してくれる病院を探すことだ。
その希望があるから絶食という究極の(わたしにとって)試練に耐えているのだ。

まぁね、開腹するならするで
いざとなったら腹くくるけどね。


どうなんだろう?

今日は斉くんがチキンスープを作ってくれた。
葱としょうがの利いた透明のスープだ。
出汁に使った鶏手羽は、しょうゆ、砂糖、酒、おろしたにんにくで照りつけ
晩酌のお供にしたそうな。

「大根と揚げを煮た煮汁も持ってきたよ。」
嬉しいなぁ。

スープにはけっこうな油分が含まれているが
それでも所詮液体で・・・
小腸とは別の意思を持った胃が空腹のサインを発令する。
ぐー・・・
「は・腹減ったぁ〜〜〜。」
「あのさぁ・・・」
「はい?」
「真理さんって、我慢してるの?」
「へ?」
「お腹空いてるのを我慢してるの?」
「い?」
「いや、食べたいのに我慢してるのかなぁ、って・・・
だったら、よく我慢できるなぁって・・・すげぇ。」
「・・・あのさ・・・
我慢する以外の選択肢ってあるわけ?」
「え?」
「我慢するしかないなら、我慢するしかないじゃん。」
「それで我慢してるのが・・・すげぇ。」

じゃぁ、わたしはすげえんだろうよ。

外出許可をもらって家に帰ることは出来る。
でも、それをしないのは
わたしが意志薄弱で誘惑に弱いことを
誰よりも一番自覚しているからだ。
大豆や金ちゃんや小豆や熊っちや吟は
(多分、足袋は気にしていない)
わたしの顔を時々見たほうが安心するし
そうした方がいいに決まっている。
分かっているのにそう出来ないのは
わたしが少しも「すごく」ないからだ。

「他の人ってさ、絶対みんな医者の言うとおり
何回も食べちゃうと思うんだよね。
真理さんくらいの状態の人ってさ。
それでイレウス再発させて、緊急手術になるんだと思う。
真理さんは、これ以上食べるとイレウスになるって
自分で食べるのを止めたじゃない?
だから1ヶ月以上も宙ぶらりんでいなきゃならないんじゃないのかな?」

え〜〜〜〜〜っっ、そっち?

「イレウスになるって分かってるのに食べちゃうなんて
ただの馬鹿じゃん!
いくら医者に食べてもいいって言われたって
自分の体なんだからさぁ。
言っとくけどイレウスって痛いし苦しいし気持ち悪いんだよぉ!!」
「う・うん。
だけど真理さんみたいな状態の人っていないじゃん。
医者も始めてだって。
だからさ、北里に入院できたら食べちゃったほうがいいかもなぁって。」
「なに言ってるの?
そんなことしたってイレウス管入れられておしまいだよ、きっと。」
「そっかなぁ・・・」

うーん・・・不安になってきた。

やっと航ちゃんとおーくんの直接対決(?)が叶った。
「強力にプッシュするから!」と約束してくれたおーくんは
「2週間後にベッドを空けてくれるというところまではこぎつけたけど
手術の予定までは引き出せなかったよ。
でも、一応なんとか向こうには行けるから。」
「ありがとうございます。
お疲れ様でした。」
「うーん、微妙だけどね。」

感謝、感謝。

病院慣れ。

1週間も休暇を取ったせいか、おーくんは今日も登院している。
「今電話したら、明日の夜・・・
明日もまた一日手術だって!
あちらから電話をもらえるよう約束取り付けたから!」
「よろしくお願いします。」
「うん。
でさぁ、栄養ドリンクなんだけど
もう一本ずつ、飲めない?」
「ゑ?一日に6本ってこと?」
「そう・・・だめか・・・甘いの苦手なんだよね?」
「いや、飲めと言うなら飲みますけど?」
「はははは・・・」
「自宅で作ってもらってきたスープなんか飲んでるけど。」
「そっか。
でもねぇ・・・カロリーが明らかに足りないんだよねぇ。」
フェイドアウト・・・おーい!

同室の方は無事に退院して行かれた。

残った患者さんは末期の肝臓癌だ。
以前はがんの治療で入院されていたそうだ。
82歳と高齢でもあり、手術はされていないようだ。
10日前から腹部に痛みがあり腹水が溜まり始めたらしい。
それでも「救急車は乗り心地が悪い(?)」から、という理由で
家で我慢していたのだと言う。
父のこともあって、状態がかなり良くないことが伝わってくる。

この1ヶ月に無言の帰宅をされた患者さんを何人も見てきた。
実際に本人の顔を見ていなくても
ナース室傍の部屋の慌しさで分かる。
病院慣れっていうのかな、これも・・・。

重苦しい気持ちの重さが少しずつ減量しているのが・・・なんかね。
でも、そういうものでしょう?

同室の方の声や物音で睡眠不足になる。
仕方のないことなんだけどねぇ。

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